概要
VMware vSphere環境において、ESXiサーバの性能向上のためLAGを使用することがあります。リンクアグリゲーション、IEEE802.3ad(IEEE802.1AX-2008)のことです。呼び方は、ポートチャネルや、CiscoではEtherChannel、HPEではトランク等…。
本記事は、ESXiサーバにおけるLAG設定の概要をまとめたものです。
主な対象はESXi 6系、7系です。
- ESXiサーバのLAG設定の概要を把握する。
- 設定のポイントや、接続先の物理スイッチと一致させる設定箇所を把握する。
基本
ESXiサーバで利用可能なLAG構成
使用する仮想スイッチの種類により、サポートされるLAG構成が異なります。
仮想スイッチ種別 | サポートされるLAG構成 |
---|---|
標準仮想スイッチ(vSS) | static LAG(静的)のみ |
分散仮想スイッチ(vDS) | static LAG(静的)、およびLACP(動的) |
vDSは、vSphere Enterprise Plus相当で利用可能です。vSphere Standardでは利用できません。
当然ですが、ESXiサーバの接続先となる物理スイッチでも使用するLAG構成をサポートしている必要性があります。
ESXiサーバにおけるLAGの用途や基本構成
LAGを構成することで、より大きなネットワーク帯域の確保や、ネットワーク障害時にも運用継続するためのNIC冗長性の確保ができます。
例えば、以下のトラフィック用にLAGを適用する等が考えられます。
LAG構成では、必要に応じて以下の構成も検討します。
- 10Gbps NIC
- ジャンボフレーム
- ESXiサーバ側でLAGを構成する物理ポートは、複数のネットワークカードから構成(1つのネットワークカード障害時の運用継続)
- 物理スイッチ側でLAGを構成する物理ポートは、複数の筐体から構成(1つの筐体の障害時の運用継続)
※スタック構成やマルチシャーシLAG(MLAG)等
static LAGの設定
標準仮想スイッチもしくは分散仮想スイッチにて対象NICのチーミングを構成し、物理スイッチのstatic LAGを設定したポートと接続します。
static LAGの場合、仮想スイッチ側の設定におけるポイントは以下です。
- 仮想スイッチのロードバランシングモードは「IPハッシュに基づいたルート」
- ネットワーク障害検出ポリシーは「リンクステータスのみ」
- すべてのNICを「アクティブ」
以下、参考になるVMwareのdocsです。
- 標準仮想スイッチによるstatic LAGの設定例
※静的LACPと記載されていますがstatic LAGのことです - 標準仮想スイッチにおけるチーミング構成の全般的な説明
- 仮想スイッチで使用できるロード バランシング アルゴリズムの説明
LACPの設定
分散仮想スイッチにて対象NICのチーミング(LAGという設定項目)を構成し、物理スイッチのLACPを設定したポートと接続します。
LACPの場合、仮想スイッチ側の設定におけるポイントは以下です。
以下、参考になるVMwareのdocsです。
- 分散仮想スイッチにおけるLACPの設定例1
- 分散仮想スイッチにおけるLACPの設定例2
- 分散仮想スイッチにおけるLACPの概要
※ESXiサーバで設定可能なロードバランシングモードの一覧あり(「vSphere LACPは次の負荷分散タイプをサポートしています」の箇所) - ESXiサーバがサポートするLACPバージョンの説明
※ESXi 6.7以降はLACPv2のみをサポート - 分散仮想スイッチでのLAGの設定手順
詳細
注意点
LAGとiSCSIマルチパスの併用は未サポート
ESXiにてLAGを構成するNICを、iSCSIマルチパスに使用することはVMware社にてサポートされていません(iSCSIマルチパス:複数のvmnicをそれぞれiSCSI用にポートバインドさせるソフトウェアベースの冗長パス構成)。
異なるレイヤの冗長化機能を同時に使用することになるためと思われます。
分かりやすい説明が見当たりませんでしたが、VMware社のKBに、「iSCSI ソフトウェアのマルチパスには使用しないでください」といった記載があります。
LAGの動作確認
LAGを構成したポートが意図通りに動作しているか動作確認の観点についてです。
うまく通信ができない場合や、あるいはうまく通信できているように見えても実は設定が間違っている場合があるかもしれません。例えば、設定が間違っている場合、パケットロスが発生して通信が不安定になる等、分かりづらい現象が発生する可能性もあります。
以下のような動作確認の観点が挙げられます。