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(5) SUSEによるRHEL互換ディストリビューション発表

概要

Red Hat社が、従来は一般公開されていたRHELソースコードを顧客やパートナーにのみ提供するよう方針変更しました。

その後、SUSERHEL互換ディストリビューションを開発、保守するプロジェクトの開始を発表したので、本記事でメモしていきます。

RHELソースコードの一般公開停止の件の概要は、以下の記事にまとめてあります。

happy-nap.hatenablog.com

Stable Diffusionで作成
Stable Diffusionで作成

SUSEのブログ記事とニュース

以下のブログ記事が発信されています。

気になる方は原文 (英語) をご覧いただけたらと思いますが、本記事ではせっかくなので日本語ページの方を参照していきます。

なお以降の引用は、特に記載のない限り、上記2つの記事のいずれかを引用元としています。

新たなRHEL互換ディストリビューションに1000万ドル超を投資

エンタープライズ向けLinuxの大手であるSUSEが、RHEL互換ディストリビューションの開発、保守プロジェクトを発表しました。1000万ドル以上の投資が予定されています。

自らの主要プロダクトである SUSE Linux Enterprise (SLE) 、あるいはコミュニティ版の openSUSE とは系統の異なる RHEL と互換性のあるディストリビューションを新たに作るということです。

一般公開されているRed Hat Enterprise LinuxRHEL)をフォークし、制限なく誰でも利用できるRHEL互換ディストリビューションを開発・保守すると発表しました。今後数年間で、SUSE はこのプロジェクトに1000万ドル以上を投資する予定です。

ハードフォークと表現されています。

SUSEは本日、RHELコードベースのハードフォークを構築し、サポートし、コミュニティに貢献すると発表しました。

SUSEの最高技術・製品責任者(CTO)であるThomas Di Giacomo博士のコメントでは、この新ディストリビューションSUSEポートフォリオに含まれることが示唆されています。

「この新しいRHEL互換Linuxディストリビューションは、SUSEポートフォリオとともに、エンタープライズLinuxクラウドコンピューティング、コンテナ化、エッジ、AI/ML、その他の新興技術において、コミュニティと顧客がかつてない進歩を遂げるための一助になると確信しています」

代替ソースコードへの継続的な無償アクセス

この新たなプロジェクト (ディストリビューション) では、誰でもソースコードにアクセスできるようになる予定です。

SUSEは、オープンソースコミュニティと協力して、RHELCentOSのユーザーのための長期的かつ永続的な互換性のある代替製品の開発に取り組んでいます。SUSEは、このプロジェクトをオープンソース財団に寄贈し、代替ソースコードへの継続的な無償アクセスを提供する予定です。

"オープンソース財団" は、英文の方では "an open source foundation" とあります。これから設立するものでしょうか。今のところは、既存かつ特定の財団を指してはいないのかと思います。

オープンソースに関する主張

OSSは無償で自由に利用できるべきという主張も添えられています。

そのようなOSSの特徴を尊重しながらビジネスを展開するというスタンスですね。

ソフトウェアは「誰でも自由にアクセスし、使用し、変更し、(修正された形でも修正されていない形でも)共有できる」べきであるという考え方です。

プロプライエタリになることが、オープンソース企業間の競争の根拠になってはなりません

サポートに対するSUSEの自信を感じさせるコメントもあります。

当社の顧客は、ソフトウェアに対価を支払うのではなく、長期にわたる24時間365日のサポート、セキュリティ、認定スタック、そしてオープンソースコミュニティの代表として、ビジネスクリティカルな環境でそれを実行する能力に対価を支払うのです。私たちは、お客様にとって最も信頼性が高く、費用対効果に優れたベンダーであることを競うのです。

CIQ Gregory Kurtzerのコメント

SUSEの記事ですが、Rocky Linuxの主要スポンサーであるCIQの Gregory Kurtzer 氏のコメントも添えられています。

エンタープライズLinuxコミュニティは、標準化、安定性、一貫性を必要としています」。CIQ最高経営責任者(CEO)であり、Rocky Linuxの創設者でもあるGregory Kurtzer氏は話します。

Rocky Linux と関係がある?

わざわざCIQの人がコメントしているということは、今後、Rocky Linux (RESF) と何らかの協業もあるのでしょうか。

ちなみにRocky Linux 側は、RHELソースコード公開停止後、以下のようなコメントを出しています。

While this decision does change the automation we use for building Rocky Linux, we have already created a short term mitigation and are developing the longer term strategy. There will be no disruption or change for any Rocky Linux users, collaborators, or partners.
出典:Rocky Linux Expresses Confidence Despite Red Hat's Announcement

この "the longer term strategy" の内容や、最近のRocky Linux側の強気なコメントが、今回のSUSEの発表とつながっていたりする可能性もゼロではないですね…というのは個人的な憶測です。

happy-nap.hatenablog.com

もちろんSUSEは継続

SUSE系のディストリビューションについても、きちんと継続予定とのこと。

SUSEは、SLEやopenSUSEなど、高い評価を得ているLinuxソリューションへの投資に引き続き全力を尽くします。


もう1点付け加えたいと思います。SUSEが、openSUSE Linuxディストリビューションだけでなく、SUSE Linux Enterprise(SLE)およびAdaptable Linux Platform(ALP)ソリューションにも引き続き全面的にコミットしていることは言うまでもありません。

気になる点

続いて、個人的に気になった点を記載していきます。

ハードフォークかつRHEL互換、の骨子

私の察しが悪いだけかもしれませんが、"ハードフォークかつRHEL互換"という部分がよく分かりませんでした。

Rocky Linux や AlmaLinux との違い

Rocky Linux や AlmaLinux をリリースするためのプロセスは、"RHELソースコード入手とリビルド” と表現できます。

今回のSUSEの発表は、RHELを "フォーク" して、自らのプロジェクトとして開発、保守していくというものだと考えられます。

フォーク時点

ソースコードの一般公開を前提にしたフォークです。

フォークするため最初にソースコードを入手する方法は、RHELの規約 (EA等) とは関係の無い経路になるでしょう。

それは、Rocky Linux や AlmaLinux 側がコメントしているような経路かもしれません。

happy-nap.hatenablog.com

フォーク後の互換性維持

"ハードフォーク" としつつも、あくまでRHELとの互換性のあるディストリビューションということなので、今後のRHEL側の修正やアップデート内容をどのように取り込んでいくのか、そのプロセスの確立が重要です。気になります。

が、今回の発表の中では特に触れられていません。

RHELとの互換性を訴求するのであれば、RHELソースコード自体へのアクセスは何かしら必要になるでしょう。FedoraCentOS Streamといった、RHELのアップストリームのソースコードRHELのそれと同一であるとは言えません。

最終的に、Rocky Linux や AlmaLinux のような、"RHELソースコード入手とリビルド” とは区別されたプロセスを目指すのでしょうか。

またその新ディストリビューションが、Red Hatが批判する ”リビルドするだけ” の "クローンOS" に該当するのかどうかRed Hat側はどのように解釈するのでしょうか。

SUSEにとってアウェイなRHEL系プロジェクト

RHELのアップストリーム、FedoraCentOS StreamといったプロジェクトはいずれもRed Hatが支援するものです。

つまり、RHELディストリビューションはアップストリームを含めてRed Hatが相当の影響力を持っています。

最悪、Red HatSUSEによるRHEL互換ディストリビューションの開発、保守を邪魔してくるかもしれません。

以前からのRHEL系を含むサポートビジネスの強化?

ところで、SUSEは以前から "SUSE Liberty Linux" というサービスを提供しており、これはSUSE系以外にRHELCentOSも混在する環境をサポートできるというユニークなものです。

そのような事業に、今回のRHEL互換ディストリビューションのプロジェクトがマッチするのかもしれません。

今回の発表で、以下のように "既存のLinuxを維持したままSUSEに乗り換え" といった点に訴求しています。この "乗り換え" が具体的に何を意味するのか分かりませんが、"SUSE Liberty Linux" と関連しているしているかもしれません。

最優先事項は、お客様に選択肢を提供し続けることです。SUSEは本日、RHELコードベースのハードフォークを構築し、サポートし、コミュニティに貢献すると発表しました。これは我々が得意とすることであり、顧客に長期的な互換性と選択肢を提供することになります。
 
本取り組みをわかりやすくご説明いたします:
 
携帯電話のユーザーであれば、電話番号を保持したまま電話会社のプロバイダを変更できる機能を求めるでしょう。
 
同様に、Enterprise Linuxのユーザーであれば、既存のLinuxを維持したままSUSEに乗り換えることができますSUSEは、オープンソースソフトウェアのユーザに対して、顧客にとって重要な点を妥協することなく、高い競争力で企業価値を提供するエキスパートです。

RHEL系のエコシステムがかえって拡大?

Rocky LinuxやAlmaLinuxは今後もリリースを継続するコメントを発表済みで、さらに今回、SUSERHEL互換ディストリビューションを発表しました。

Red HatはクローンOSの存在に対して否定的なので、今後さらに策を講じるかもしれませんが、展開次第では、今までよりもRHEL系のエコシステムがかえって拡大するような気もします。

極端な例としては、Red Hat側が今後軟化姿勢に転じ、RHEL互換ディストリビューションに対して協力的な姿勢を示す可能性もあり得ます (とは言っても、Red Hatに対する各所からの不信感は、なかなか拭えなくなったと思いますが)。

Oralceのブログ記事との対比

あとは、Oracleが同タイミングでブログ記事を発信していますが、新プロジェクトや投資を決定したSUSEの発表に比べると、ぼんやりとした印象です (個人の感想です)。

happy-nap.hatenablog.com

参考

SUSEや、Gregory Kurtzer氏に関連する記事です。

まとめ

本記事では、RHELソースコードの一般公開停止後、SUSERHEL互換ディストリビューションを開発、保守するプロジェクトの開始を発表したことについてまとめてみました。

happy-nap.hatenablog.com