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WindowsのDSP版ライセンスの概要と不思議

概要

WindowsのDSP版ライセンスについて、不思議に思うことがあり調べてみました。
本記事は、DSP版ライセンスの概要と、不思議に思った点をまとめるものです。

基本

Windowsのライセンス形態

Windowsのライセンスの形態は複数あります。

  • リテール版: いわゆる普通のパッケージ版。
  • OEM版: 以下の3種。
    • Direct OEM版: メーカー製PC向け、普通の"OEM"。MSとOEMが直接契約。
    • DSP版: 代理店から購入したライセンスをOEMシステムビルダーが販売。
    • Windows Embedded版: 組込デバイス向け。Windows10 IoT(シンクラ)等も。
  • ボリュームライセンス版(VL版): 個人向けではなく、企業、公共機関、教育機関向け。コマーシャルライセンス。

本記事では、DSP版について記載します。

DSP版の概要

  • DSP版の正式名称は、"OEMシステムビルダーライセンス"。

  • DSPとは、"Delivery Service Partner"の略。

  • 以下の流れで提供される。
    Microsoft → 正規OEM製品販売代理店 → システムビルダー → エンドユーザ

  • DSP版は、OEM版の一種なのでMicrosoft製品でなく販売店(システムビルダー)の製品という位置づけ。

  • 登録されたシステムビルダー(販売店)が、自社(自店)のオリジナルPCやPCパーツとDSP版ライセンスをセットで販売可能。

  • DSP版にはダウングレード権があり、Windows11のライセンスを購入した際にWindows10を使用可能(リテール版では不可)。
    参考:Windows 10 へのダウングレードについて

  • DSP版には、以下の販売形態がある(あった)。

    • パーツバンドル
      PCを構成するパーツと一緒に販売
    • プレインストール
      PCにプレインストールして販売
    • 単体販売
      ライセンス単体での販売 (2022年時点ではこの販売形態は無さそう)
  • DSP版には、以下の制限がある(※)
    (※)一部そのソース(根拠)を確認できないので不思議に思いました。そのあたりを記事後半に記載していきます。

    • (パーツバンドルの場合)一緒に販売されたハードウェアを常に接続したコンピュータでのみ使用可能。そのパーツを交換すると使用不可。※ソース不明
    • マザーボードにライセンスが紐付けられるため、マザーボード交換時にはライセンス使用不可。※ソース不明
    • Microsoftによるサポートは提供されない(システムビルダー(販売店)がサポート)。
    • DSP版ライセンスを使用しインストールしたPCとは別のPCにライセンス移譲は不可。
  • ざっくり言うと、リテール版に比べ別PCにライセンス移転できない点が主なデメリット。

    • 対して、ダウングレード権があり、価格が若干安いというメリットあり。

DSP版の用途

以下のようなユースケースがあります。

  • プレインストールのDSP版

    • PCショップ(システムビルダー)のオリジナルPCへのプレインストール

  • パーツバンドルのDSP版

    • エンドユーザによる自作PCへのインストール
    • 古いPCを再利用等のため、OSインストールし直して使用

DSP版ライセンス単体では購入できないので、プレインストールされたものか、PCパーツとセットで販売されているものを購入することになります。

DSP版の価格

参考までに価格も載せておきます。 DSP版はパーツバンドルの種類が色々あるので、総コストが最安と思われるものを記載しています。

エディション
リテール版
DSP版
Home
19,360円(MSストア)
※参考 (Windows11の場合)

17,036円(楽天市場)
15,718円(Amazon)
※参考 (Windows11の場合)

14,199円(楽天市場)
12,400円(Amazon)
Pro
28,380円(MSストア)
※参考 (Windows11の場合)

23,880円(楽天市場)
21,964円(Amazon)
※参考 (Windows11の場合)

19,650円(楽天市場)
14,800円(Amazon)

(2022年12月時点の税込価格、送料無料(楽天市場はショップによる))

(注)リテール版のWindows11は、10へのダウングレード不可です(比較のため載せています)。MSストアで販売されているものも同様にダウングレード不可です。Windows10のリテール版を入手するには、たまたま在庫が残っている新品か、中古品を購入する必要性があります(不正品に注意)。MicrosoftストアによるWindows10 の販売は2023年1月31日に販売終了しました。

  • DSP版のWindows11のライセンスは10にダウングレード可能です。
  • DSP版の価格は販売者ごとに違います。最安と思われるものを載せています。
  • MSストア(Microsoftストア)の価格は、定価相当の価格として記載しています。
  • MSストアのものは割高ですが、間違いなく正規品であり、またダウンロード版なのですぐに使用できます。

詳細

DSP版ライセンスで遵守すべき規約は?

DSP版のパッケージ

パッケージ写真

少し古い記事(昔のDSP版)ですが、開発元のMicrosoftのサイトから引用します。

パーツ バンドル版、単体パッケージ版に同封されている DSP 版 Windows 製品のパッケージ写真
出典:非正規品の Windows にご注意ください。

この赤いシールが、Break-the-Seal方式(シールをはがすとライセンスに同意)に相当するものです。

こちらのブログ記事に、Windows11 DSP版のパッケージ写真が掲載されています。

赤いシール(Break-the-Seal)の内容

システムビルダーが開封した場合と、(システムビルダーからDSP版を購入した)エンドユーザが個人的な用途のために開封する場合で、適用されるライセンス条項が異なるような書き方です。

システムビルダーが開封した場合は、システムビルダーライセンス契約(おそらくパッケージ裏側のX22-77277-01)に同意したことになるようです。

エンドユーザが開封する場合は、"windows.com/personaluselicense/"に掲載のライセンス条項に同意したことになるようです。ただ、その"windows.com/personaluselicense/"というWebページ?がどうにも見つからないので、一体何に同意すればよいのか分からないままBreak-the-Sealすることになりそうです。

パッケージ裏側のライセンス内容

DSP版のパッケージには、マイクロソフトOEMシステムビルダーライセンス(X22-77277-01)が貼り付けられています。
少なくとも、これには一緒に販売されたパーツを接続した状態で使用する点、マザーボードにライセンスが紐づけられる点についての記載はありません。
プレインストールに関する記載はあるものの、肝心のパーツバンドルの場合についての記載はありません。

OEMシステムビルダーの詳細については、https://devicepartner.microsoft.comを参照するよう記載がありますので、それは後述します。

devicepartner.microsoft.com

前述のライセンスから参照されているdevicepartner.microsoft.comには、OEM向けの情報が掲載されているようです。

OEM System Builder License(X21-58006-01)の掲載ページがあります。

これは前述のライセンス(X22-77277-01)とほぼ同一で、"15. PlayReady"に関する記載が増えている程度の差分のようです。

もう少し詳細な情報を探してみましたが、おそらくOEM登録("Retail & Device Partner Registration")が必要なページもあり、個人的な確認は難しそうでした。

その他、OEM system builder licensing というページもありましたが、特に詳細な情報は見当たりません。

Microsoft ライセンス条項

一応、WindowsのMicrosoftライセンス条項も探しましたが、DSP版固有の条項は見当たりませんでした。

OEM版のWindowsのライセンス条項
("エンド ユーザー向けのパッケージ ソフトウェアとして店舗から、またはマイクロソフトから直接取得"にて検索)

リテール版のWindowsのライセンス条項
("コンピューター製造業者から取得したお客様のコンピューターにプレインストール済み"にて検索)

OEM版向けとリテール版向け、2種類のライセンス条項がありますが、DSP版はOEMの方のライセンス条項が適用されるかと思います。
ちなみにこれらの差分は、主に品質保証規定に関する部分です。

なお、Windowsのライセンス条項は上記より新しいもの(2018年6月版、2021年6 月版)がありますが、同様にDSP版固有の条項は見当たりませんでした。

個別の資料

DSP版固有の資料ではなさそうですが、Microsoftのサイト内の古い資料(おそらく2011年)には以下の記載がありました。

"Hardware Replacement"より

The System Builder is required to support the software on the original PC. Understanding that end users, over time, upgrade their PCs with different components, Microsoft needed to have one base component “left standing” that would still define the original PC. Since the motherboard contains the CPU and is the “heart and soul” of the PC, when the motherboard is replaced (for reasons other than defect) a new PC is essentially created. The original System Builder did not manufacture this new PC, and therefore cannot be expected to support it. OEM Software Licensing: Rules & Restrictions

マザーボードが故障以外の理由で交換された際は、(OEMの)システムビルダーはそのPCをサポートしないだろうという旨の記載があります。マザーボードとライセンスが紐づくという直接的な記載ではありませんが、サポートの有無について言及されています。

この資料は、Office製品も含めたOEM版に関する全般的な説明資料のようです。
また、情報提供向けの資料であり、内容について保証するものではないようです。

OEMシステムビルダーによって説明が違うケースも

  • 正規OEM製品販売代理店やOEMシステムビルダーの各サイトにある商品説明では、一緒に販売されたパーツを接続した状態で使用する必要性がある旨、記載されていることが多いです。

  • 一方で、別のシステムビルダーからは、一緒に販売されたパーツを使用し続ける必要性は無い旨の説明がありました(Webページでなく個別回答)。

    • DSP版は、インストールするコンピュータで認識可能(例えばBIOSから認識可能)なデバイスと一緒に販売する必要性がある。
    • DSP版は、Windowsライセンスの"販売形態"の1つ(パーツの接続が必須かどうかに言及するものではない)。

DSP版ライセンスの不思議は…

調べた結果(わからない)

  • 以下の点についてMicrosoftが公開する資料は見当たりませんでした。

    • (パーツバンドルの場合)一緒に販売されたハードウェアを常に接続したコンピュータでのみ使用可能。そのパーツを交換すると使用不可。
    • マザーボードにライセンスが紐付けられるため、マザーボード交換時にはライセンス使用不可。
    • ("DSP版ライセンスを使用しインストールしたPCとは別のPCにライセンス移譲は不可。"という点も明記があるかというと微妙ですが…)

  • DSP版は"Microsoftの製品"でなく、"システムビルダーの製品"なので、Microsoftや代理店以外に、システムビルダーの説明も"正式な説明"になるはずですが、システムビルダーごとに説明内容が異なるという点は、やはり不思議です。

  • Microsoftが直接公開している情報量が少なすぎるようです。

    • 例えば、赤いシール(Break-the-Seal)に記載の"windows.com/personaluselicense/"が閲覧できません。
    • 確認できるライセンス条項等も一般的、抽象的なもので、一緒に販売されたパーツを接続した状態で使用する点、マザーボードにライセンスが紐づけられる点についての記載はありません。

私の個人的なまとめ(推察)

私にとって、現時点で一番しっくりくる理解をまとめておきます(推察です)。
※今後、Microsoftが公開する情報ソース等が見つかった際には、本記事を更新していきます。

  • DSP版は、Windowsライセンスの販売形態の1つ。

    • 大手メーカー(OEM版)やパッケージ(リテール版)、あるいは組織向け(VL版)とは別に、小~中規模のPCショップ等(="システムビルダー")による販路。
    • Microsoftにとっては、正規の販路の1つ。売れればよい。
    • Microsoftの製品ではなく、システムビルダーがハードウェアとセットで自由に値付けできるので、リテール版より安い場合もある。

  • (パーツバンドルの場合)一緒に販売されたパーツを接続した状態で使用しなくても、Windowsのライセンス違反にはならない。

    • 一緒に販売するパーツがPCと無関係過ぎるといけないので、とりあえずPCから認識できるハードウェアという条件をシステムビルダーに課している。
    • Microsoftにとっては、システムビルダーが市場でWindowsをたくさん売ってくれさえすれば良いので、パーツの接続有無(システムビルダー側のサポート範疇)に関して明示的に規定するつもり(必要性)はない。
    • 一方、システムビルダーとして"サポート可能な条件"という観点で考えてみると、一般的なOEMの概念(コンピュータへのプレインストール)に照らし、"一緒に販売されたハードウェアを常に接続したコンピュータであることが条件"にはなる(が、当然システムビルダーごとに微妙に違うことも)。
    • つまり、"ライセンス違反かどうか"と"サポート可能な条件"は別の話。
    • あと、あくまでOEM版ライセンスなので、別PCへの移譲は不可。

  • マザーボードにライセンスが紐付けられる、という点は、ライセンス規約というより、Windows OSのライセンス認証の仕様。

    • おそらくマザーボード故障時の交換に関しては、Microsoftのライセンス認証専用窓口にきちんと相談すれば再認証させてもらえるのでは(故障以外のマザーボード交換は再認証不可な気がする)。
    • 関連として、デジタルライセンス、OA3 DPKのあたりについては別記事にまとめる予定。

  • Windowsは逆にすごい。

    • 一般的な家電と違い、PCはエンドユーザがパーツやOS等を自由に構成変更し得るものなので、ルールがあるなら分かりやすく明示的であってほしい。
    • ところが、本記事でまとめた通り、ライセンスまわりの規約が簡単に見つからないという堂々たるブラックボックス感(さすが)。

関連記事

(下にいくほど技術寄りの内容です)

happy-nap.hatenablog.com